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1962 – 1965

欲望の線

60年代初頭のイタリアは可能性に満ちた国でした。保守的な考えに囚われたオルクス(*1)が未だ存在はしていましたが、人々を革新的な考えが席巻し、社会はまるで進歩主義者であふれていました。かつてない社会工業化が、アメリカにより強硬に推進される消費モデルからの自立を可能にし、より新しく、より”モダン”な人生のあり方を設計図や工業生産を通して実現できた時代でした。
当時のイタリアは、アキッレ・カスティリオーニが「警戒するべき」と言っていた心理学的アプローチや高価なマーケティングスタディを無視し、シンプルで且つ最低限の手段を通し、アメリカと世界中のデザイン業界の牽引役となったのです。そのような大きな成功を収めたことを改めて今顧みると面白く感じます。

まだ家族や職人を中心とした国民経済であった当時、イタリア人起業家の特性は、全く新しい工業モデルやプロダクトを創造できることと、将来世界のデザイン業界のアイコンになり得る新しい「人」と「手段」と「能力」を探し出せることでした。フロス社のディノ・ガヴィーナ氏の芸術志向の経営の後、より起業家としての経営理念の強いセルジオ・ガンディーニへ移行したこともその一例です。セルジオ・ガンディーニは1959年以降から家具業界の起点である家具ブランド「スティーレ・ディ・ブレーシャ」において妻と共に家具分野に従事していました。フロス社は金属加工を中心とした新しい産業地区の力を利用するためにガンディーニの暮らす街へ移動し、彼はすぐにガヴィーナ自身とチェザレ・カッシーナによりフロス社のパートナーとなったのでした。
フロス社のカタログには既にカスティリオーニ兄弟の「ARCO」「Toio」やCocoonシリーズなどの華麗な作品が並んでいるにも関わらず、メラーノからブレーシャへの移動後、フロス社の収益はまだ満足にいくものではありませんでした。
(*1)(ヨーロッパの伝説,童話などの) 人食い鬼

ガンディーニは、新たなニーズの発掘と経営能力を組み合わせたビジョンを持ち就任しました。そして、チェザレ・カッシーナの、建築家とのコラボレーションを楽しみながら「モダンな家具が揃っている家庭」というまだ生まれたての市場へ挑戦するスタンスに、経営者としてのガンディーニが加わりました。
このビジョンでは、生産場の工夫とコミュニケーション法の選択を通して、文化と産業が密接に協力し調和するのです。ガンディーニの経営で創られた最初のランプはトビア・スカルパ(1963年)がデザインし、バウハウスの重要な工業デザイナーのユッカー氏と同様のJucker (ユッカー)というランプで、イタリアンデザイン業界の知識階級へのオマージュとして創造されました。
カスティリオーニ兄弟が考案したアルコ・ランプは気まぐれなアメリカ市場への進出の第一歩としてシカゴの国際ホーム家具フェアで発表され、1965年にはニューヨーク・タイムズ紙に取り上げられていました。
そして、新たな照明の企画は毎回企業のオーナーとデザイナーで構成された「イメージ委員会」へ委ねられ、1つの照明器具毎に独占権で結ばれるのも新しいアイディアの1つです。この委員会にはその後長きに渡りフロスの創造的な魂を生み出していくアフラ&トビア・スカルパとカスティリオーニ兄弟が所属していました。

イギリス庭園の建築家の専門用語では、設計者が「庭をより美しくするため」に懸命に考え出した曲がりくねった道をたどらずに、自発的に出来上がる小道を定義する素晴らしい表現が存在します。大抵、行きたい場所により早くたどり着くために芝生の上に自然に作り上げられた小道のことです。このような人々の自然な足跡から描き出された小道を「Desire Lines」「願いの小道」と呼びます。誰もが願い、ルールや決まりごとから縛られずに歩きたい「美の探求」の小道。全ての庭園にこのような小道があってほしいものです。
イタリアンデザインの”庭園”でフロス社が芽生え、成長し、開花し、こうした「願いの小道」に沿ったプロダクトを世に出していきました。設計者の直観と偶発性から誕生した照明は、新たな光のあり方とあかりの灯し方を提案し、新奇性に溢れた多様な形状をしていました。

S.C.

  • 1962_1965_026256099
    Original drawing for the Arco lamp by Achille & Pier Giacomo Castiglioni, 1962. Courtesy of Fondazione Achille Castiglioni.
  • 1962_1965_036957232
    Original drawing for the Taccia lamp by Achille & Pier Giacomo Castiglioni, 1962. Courtesy of Fondazione Achille Castiglioni.
  • 1962_1965_046969238
    Exposition for the “Italia ‘61” centenary in Turin’s Palavela arena with lamps by Flos
  • 1962_1965_056975594
    Sergio Gandini with Afra and Tobia Scarpa
  • 1962_1965_076992093
    Shades of the Arco lamp await processing in the Flos factory in Nave, Brescia
  • 1962_1965_087004066
    Packaging for the Relemme lamp (graphic design by Max Huber) in the warehouse of the Flos factory in Nave, Brescia